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朝日新聞福島版連載のコラムです。(H13年5月3日)

生きる

昔からの料理   五十嵐サツキ 昭和村 72歳

いつでも作る それが楽しみ

 
   オレだりばぁさまてぃが集まっと、だんごこしゃえだり、煮物こしゃえだり、いろいろ持ち寄ってお茶飲みながらしゃべんのや。オレだりは、昔からの料理を残したてぇと思って。ばぁさまてぇで作った凍(し)み餅(もち)、凍み大根、切り干し大根とか。みんなに食べてもらいたくて出したら、喜んでくれてなぁ。

 村によそからお客様が来らったりすっと、よく頼まれんの。役場なんかから頼まれるようになって「五月会」って名前もつけてもらった。

 今は食べ方なんかが分がってきたがら、お土産にして持って帰るのな。だがら、うんとよがったなぁって思うの。

 昔は、食べ物は何にも捨てないで食べてたよ。昔の思いしたら、今は捨ててもったいないべした。食べ物だけは何ほど工夫して食べたか知らねぇ。山がら採ったり畑がら採ったのどで、買ったもんなんか何にも食べなくて生活しったんだわ。そんでも、体は丈夫だったんだよ。

 草凍み餅にする山ゴボウの葉っぱは、オレらが嫁の頃は、田植えが終わっとすぐに、カマスにポンポンいっぱいに採ってきたもんだ。

 山奥さ行ってゴボウの葉摘んで、田植え休みの時、大きな鍋でゆでてむしろに干して、乾燥したら袋にしまっておいで冬まで使った。男の人になんか手伝ってもらいようねぇんだがら。

 昔は、そうやって真っ黒ぐなった葉っぱにそば粉で作るんだもの。うんと真っ黒だ。今は冷凍しとくから、きれいな青色なんだ。これは、こびる(小昼)にした。

トチは、いまでも二百十日のころから自分で採りに行ってる。見でいて、栃が赤ぐなっから分がんの。ばぁさまてぃがトチ背負って棒ついで、山道転んだり起ぎたりして、アハハ。食糧難の頃はご飯代わりに食べたがら、どごの家だって毎日毎日トチ採りやったんだがなぁ。

 今でも色々採っておいて、冬でもいろいろ使えるように確保しておぐわげや。冷凍もできるし、昔より保存のやり方は楽になったしな。

 オレだりはそうやって採ったがなで出来る範囲でやってる。みんなに喜んでもらって、皆でワイワイ楽しく笑ってやってんのがグループの楽しみだ。だがらいつも同じ料理で、変わったがなもねぇんだ。

 ばぁさまてぃがやってる料理だもん。大して料理なんて言ったって、うまいごどいがねぇ。

 若い人にもやって貰いたいと思ってる。オラだりは平均年齢六十八歳ぐらいになった。年取ったからもうやめっぺって言ってるんだけど、まわりがら絶対やめでダメだって言われでる。

 頼まれだらいづだって作るよ。それが楽しみだもの。うまいなんて言われだら、ほんとにうれしいわなぁ。

 オレは七十すぎっちまったからボゲっちまったぁ・・・なんて引っこんでらんにぃわい。

(奥会津書房編集部)

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