ハヤはセノヨ(ませ場)を掘って、投網で獲(と)る。
黒谷川は水が冷たくてハヤが上がってこないから、セノヨは伊南川に作る。水温が低いとハヤは来ねぇ。
ませ場の作り方は人によって違うが、ませ場作るには許可がいるんだ。
セノヨ場は瀬に作る場合が多いが、トロ場に作る人もいる。平らな石を積んで、二段階に波が立つようにして、その前に穴を掘る。そこに細かい砂利を敷くんだ。そこにハヤがつくんだよ。
伊南川の水温が一二度ぐれぇになっと、ハヤがつく。合流する只見川からも上がってくるんだ。
獲ったハヤはイケスに放しておいて、十一月の初め頃に焼いて干すんだ。ブンブン(大型のハエ)がいなくなってからでねぇと、卵生み付けっかんな。
焼いたハヤは、ここいらでは「おひら」って椀物(わんもの)に使うから、民宿旅館が買っていく。結婚式とか子供(おぼ)立て祝いなんかの、祝い事には必ず出す料理なんだが、民宿旅館では忘年会や新年会にも出してくれるよ。
ハヤの他に、こぶ・長芋・人参・油揚げ・舞茸(まいたけ)と六種類入れて煮るのが普通。川魚は、左を頭にして横一文字に入れるんだ。
今年は一番いっぺぇ獲った人で、一網二十五キロ入ってた。重くて上がんねぇから、水の中引っ張って来るんだ。
投網打つときは一メートル位石を積んで、柳の木を立ててそこに隠れて待ってるわけよ。柳の陰から、集まってる魚めがけてバッと網を打つ。だからあんまり大きく広げねぇ。
俺(おれ)が作る網は、目が八百。アユのサシ網も自分で作る。セノヨやってる最高齢は八十四歳って人がいるが、その人は少し錘を軽くする。俺は二貫七百(十キロ)ぐらいの網だ。
打った網を引くときは、流れに逆らうように上に引く。魚は上に行くからな。残るやつもいっから、まぁ、三回は網打てるな。
でも、これだけで生計立ててる人はいねぇよ。楽しみでやってんだ。焼いたハヤを民宿旅館に出すくれぇで、親戚やら近所やらに配って、正月用に使うわけよ。年取り神様と家の神様と、自分たちが食う分はナ。
もう四十年以上、この漁やってる勘定だよな。
この朝日地区では二十人ぐらいセノヨやってる。みんな昔からやってる連中だ。若いモンは誰もやらねぇ。
ハヤもアユも、放流してる。西部漁協のふ化場でふ化させてるから。舘岩から上がってくるハヤは、五種類いるな。同じハヤでも少しずつ違うんだ。
しかし伊南川も汚れてきたよ。消毒水やら生活排水のせいだろうな。どこでも浄化施設を整えようって頑張ってるようだから、またきれいな川に戻ってくれるだろうって期待はかけてるが・・・。
伊南川が元気な限り、俺もセノヨは続けるサ。
(奥会津書房編集部)