BOON文化シリーズ
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BOON 文化シリーズ 1

 -奥会津- 自然からの伝言

 

第三章 知のみなもと

                        二瓶 厚
                        県立若松女子高校 

森に学ぶ

 日本の国土の67%は森林です。その日本は南北に長く,しかも標高差も大きいので、生育する植物も極めて多様です。日本の森林帯としては、5つの森林帯があります。 亜熱帯多雨林・ 照葉樹林・ 夏緑樹林・ 針葉樹林・ 高山草原という、それぞれの森林帯には特長的・代表的植物が生育します。福島県会津地方は、山地の一部は針葉樹林帯に属しますが、大部分は夏緑樹林帯です。すなわち、夏に繁茂した木々は、冬期間には落葉し水分蒸散を防ぎます。そして木々の芽は鱗片で保護されるのです。この夏緑樹林帯はブナやミズナラが代表的樹種(優占種)です。

 森林には優占種を中心に、いろいろな種類の植物が同居しています。それらの植物は、ある面積内で、高さの違いによって立体的に共存しています。当然の事ながら太陽光は高木層に最も良く当たり、それらは光を好む陽性植物です。低層になるに従って少ない光でも生育の出来る陰性植物が生い茂るようになります。また森林の端は、低木やつる性植物が生育したり樹木の枝が低く垂れ下がり、森林外部との境界を形作ります。「マント」と呼ばれるこの境界層は、森林内部を外部から遮断し、森林をひとつのまとまった生態系にしています。

 こうした森林に、1本の道を通すことによって森林は大きな影響を受けます。森林内部に急に何もない空間が出来るために、太陽光が直射すると陰性の下草類は枯れ、陽性の植物が進入してきます。また、風が通り抜けるようになるのでそれまで互いに支えあっていた樹木が倒れやすくなります。このようにして樹木の生理的バランスが崩れて枯死がすすみ、森林は壊れて行きます。特に、高所寒冷地の森林はもろく、破壊されやすいのです。一旦破壊されると回復不可能な状態にまでなってしまうことあります。日本各地に作られた観光用の林道にはこうした例が数多く見られます。

 原生林とは人間の手が全く入らず破壊されていない森林のことをいいます。また、人間の手が入ってもごくわずかな伐採程度で、苗木を植えるなどの造林が行われていない森林は自然林と呼ばれたりします。日本に原生林はないといわれています。自然林も少なくなって来ました。

 これに対し、日本の山々を覆う森林の約40%は人工林と呼ばれ、人がある目的持って特定の樹木を植林し、その成長を促すために種々の管理を行い、育てている森林です。人工林として多く植林されるのは、スギやヒノキなどの針葉樹です。これらの針葉樹は建築用材としての用途が広いからです。それは、針葉樹は香りが良いうえに比較的柔らかく、木目も直線的で加工しやすいからです。これに対してブナやミズナラなどの広葉樹は、硬く緻密な材質で、幹も曲線的で加工しにくいので建築用材としては敬遠されるのでしょう。しかし、それらの性質もうまく利用すれば味わい深いものです。

 自然林は、そこの気候に順応した多くの樹種が優占種を中心にバランスが取れた状態で繁茂します。このような自然林は、非常に豊かな生物相を示します。植物のみならず、その植物に支えられて、ミミズなどの土壌動物からイノシシやクマなどの大型哺乳動物、あるいはタカなどの猛禽類まで食物連鎖を介して実に多様な生物種が共存するのです。

 一方、人工林は単一種であることが多く、このために生育可能な生物種は激減します。近年人里に野生動物が出現し、畑作物を荒らすことが珍しくなくなりましたが、その原因として、野生動物の生育する森林が全体として機能が低下してきたと考えられます。自然林が減り、単一樹種の人工林が増えることは、生物相が貧弱になることです。これらの課題を解決することは、これからの環境問題を考える際にも重要なポイントになるでしょう。

<続きは、本をお買い求めの上ご覧下さい>

 

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