新生奥会津書房が、自立運営の中で初めて生み出す記念碑は、写文集『蘇る記憶』です。
『蘇る記憶』は、モノクロームのフィルムが捉えた昭和50年代・奥会津のさりげない日常が収められた写文集です。
当時の奥会津は、東京を目指して若者は村を離れ、高度経済成長の時代の波から遠く隔てられていました。それでも人々は農に励み、互いを思い、静かな佇まいの中でひたむきに暮らしを営んでいました。寄せられた3000枚を越える夥しい写真には、消え行く藁葺民家や人々の営み、村人達のさざめきを纏ったあぜ道や、静謐な空気さえも写し出されています。そしてそこからは、記録者自身の慟哭も聞こえてきます。
奥会津書房では、二度と取り戻す事の出来ないだろうこうした情景を、一人でも多くの方に知っていただき、次の世代に伝えて行こうと決意しました。
『蘇る記憶』はしかし、単に過ぎ去った時を回顧する記録写真集ではありません。二十世紀に置き去りにして来たものは何なのか。捨てて得たものは何なのか。人とはいかに生くべきものなのか。その根源を凝視する手がかりでありたいと願いつつ編む本です。過去を旅することと未来を見つめることは、奥会津という地域にあってはまさに同義であると考えるからです。 |